2005年 読書記録     

 

12月   神の手(上・下)
 P・コーンウエル(講談社)(12/25)
 クリスマス・シーズン恒例のスカーペッタシリーズ。
最愛の人に最悪のことが起こりつつある・・・
詳しいことはここには書けません。一読を。
11月 野生の風(再読)
 村山由佳(集英社)(11/18)
 男運が悪い女性って、確かにいます。
『運』が悪いだけなのか、自分を出せないだけなのか。
春の海
 三島由紀夫(新潮文庫)(11/13)
 映画が公開されるというので読んでみました。
神の狩人(上・下)(再読)
 グレッグ・アイルズ(講談社文庫)(10/21)
炎と花(上・下)
 (ヴィレッジブックス)(10/15)
戦慄の眠り(上・下)
 グレッグ・アイルズ(講談社文庫)(10/10)
天使の背徳
 アンドリュー・テイラー(講談社文庫)(10/6)
 

天使の遊戯
 
アンドリュー・テイラー(講談社文庫)
(10/2)

9月
 遠藤周作(新潮文庫)
 書店のキャッチコピーに惹かれて衝動買いをしました。
 日本が鎖国になる前に、
エスパニヤへ使徒として派遣されることになった下級武士が、
小さな日本の国の政と、
日本にキリスト教を普及させたいと願う神父の野望と、
人間として生きる個人の人権と、
本当の信仰と、宗教と・・・
そんなことに無縁で生きてきたはずなのに
巻き込まれ、翻弄され、
最後は(おそらく)死刑になってしまう・・・。
 実在の人物や出来事をモデルにしているそうです。
 今の日本の平和さと自由さに感謝したくなります。(9/23)
  水の時計
 初野晴(角川文庫)
 夜が似合う、不思議な少年と不思議な病院と、
不思議な少女と不思議な医師、そして、病気と戦う人たちの物語。
連作短編集のような感じです。
 オスカー・ワイルドの『幸福な王子』を軸にして物語が進んでいくので、
巻末の解説の中に、オスカー・ワイルドについて少し触れていて、
そちらにも興味を持ちました。
オスカーは幼少の頃に、親から少女として育てられ、
青年期になって、当時はタブー視されていた同性愛で投獄され、
同じく当時、不治の病とされていた梅毒に侵されていたとか。
 そう言えば、ベルバラのオスカルは、どうしても男の子が欲しかった父親から
男として育てられたのでしたっけね・・・。
オスカーとオスカル、アイルランドとフランス・・・。
池田理代子さんはオスカー・ワイルドを頭に置きながら
オスカルを創作したのでしょうか?
それでもオスカルは同性愛者にはならず、遠くからフェルゼンに片想いし、
最後には、ずっと見守りつづけてくれたアンドレと結ばれ、
2人とも歴史と暴動に飲み込まれて不慮の死を遂げる。
・・・ああ、話がどんどん反れてしまいます・・・誰か止めてww(9/11)
誰か Somebody
 宮部 みゆき(カッパノベルズ)
 宮部みゆきはすごい!
それが、ここ何冊か彼女の本を読んだ私の感想です。
 こんなに良い人間は、今の日本には存在しないだろうとわかっていながら、
それでも、こんな人が私の周りに1人でもいてくれたらいいのに、と
ついつい、祈ってしまいたくなるほど、主人公の杉村は魅力的です。
杉村夫人の菜穂子は、治療を要するほどではない程度の心肥大があり、
それはまさしく、私と同じ病気で、その割りには、私の夫は杉村ではない。
そんなところからも、物語の中に引き込まれてしまったわけですが、
それだけではなく、いろんな要素が盛りだくさん。
死亡事故(事件?)の犯人探し、約30年前の誘拐事件の真相、
姉妹の愛憎感情、恋愛について、結婚について、夫婦のあり方について、
不義について・・・
読んでいて全く飽きる事がありません。
 やっぱり、宮部みゆきはすごい!
何度でも言いたいくらいです。
それ以外、言葉はありません。(9/4)
8月 時生
 東野 圭吾 (講談社文庫)
 
ジャンルはミステリーになるのでしょうか。
 どことなく、以前読んだ『海辺のカフカ』に雰囲気が似ている気がします。
最初の4分の3くらいまでは、読み流せる物語だと思って、軽く見ていました。
「日本人が小説を書くと、どうしても軽くなるよなぁ」なんて思いながら・・・。
ラストに行くにしたがって、「ごめん!私が悪かった!!」と
謝りたい気持ちで一杯になりました。
不意打ち、って言うか、闇討ちに会った感じです。
やられた〜・・・。(8/31)
アニーの冷たい朝
 黒川 博行 (創元推理文庫)
 サイコサスペンスです。
 最初は、鷺沢萠が解説を書いているというので、その解説読みたさに買ってしまいました。
 はらはらドキドキの連続です。
自分の身近に殺人者がいるなんて誰も思わないものだ というような言葉が作中に出てくるのですが、冷静に自分のこととして考えた場合、それはやっぱり真実だろうなと思ってしまいました。
 どんなに変な人が近くにいても、まさか殺人までは犯さないだろう、
きっと、そう思ってしまうに決まっています。
それがどんな人であっても、心のどこかで、人は、性善説というものを信じているのです。
それが盲点になって被害者になってしまう・・・。
「他人を見たら泥棒と思え」
これは、ある意味、肝に銘じておかなくてはならない真実なのかもしれません。(8/28)
7月 これ 孤宿の人(上下)
 
宮部みゆき(新人物往来社)
 時代劇の良さがたくさん詰まっています。
古き良き時代の日本人の、素朴さ、暖かさ、おおらかさ、純粋さ・・・。
私たちは、いつ、何故、そういうものを失ってしまったのでしょうか?
 江戸から讃岐へ、ひとり追いやられた少女「ほう」が
「呆」から「方」へ、そして「宝」になっていく、
その背景にしっかりとある深くて大きな愛に触れ、
私はただただ涙を流すばかりでした。(7/10)
ここ ダーリンは外国人外国人の彼と結婚したら、どーなるの?ルポ。
ダーリンは外国人(2)
ダーリンの頭ン中
 
↑すべて↑小栗 左多里(メディアファクトリー)
 
天然ボケとしか思えないトニー氏の言動がかわいらしい。(7/3)
これ 死神の精度
 伊坂幸太郎(文藝春秋)
 
連作短編集。
 千葉という名前の死神(彼らは町や市の名前をつけられていて、
姿や年齢は毎回変わるが名前だけは変わらない)の、人間観察 とでも言おうか。
 千葉は人間ではないので、人間の思想や行動を不思議に思っていろいろ質問するのだが、
外見は人間なので、人間から見れば単なる『天然ボケの人』にしか映らない。
それがとても魅力的だし、邪気のない質問は時に琴線に触れて涙を誘う。
 6話を、何も考えずに同じ時代のこととして読み進めていくと、
最後の話に、これまたグッとくる・・・。
ネタバレしちゃうので、これ以上は書きませんww
 読み終わるのが勿体なくて、いつまでも千葉ちゃんと一緒にいたくなるような本です。(7/2)
6月 ここ 空山
 帚木 蓬生(
講談社文庫)
 
舞台は前作空夜から5年後。
 俊子の夫了平は脳内出血が原因で半身不随になり愛人と別れて入院中。
真紀の夫は家族に内緒の何度目かの借金がバレて
離婚届の用紙を残して失踪。
情けない夫達は相変わらず情けなさ健在です。
 一方、元気な女性たちはと言うと、
俊子は市議会議員になっており、5人しかいない党派の違う女性議員をまとめたり、
環境問題に取り組んで暴力団に銃で撃たれたり、
真紀のほうは、箱入り娘からおとなしい奥さん というレッテルが剥がれたとたん
幼なじみの診療所の先生と、アウトドアでまぐわい放題。
あるときはキャンプ場の狭いテント内で、娘の伽奈が眠るすぐ横でも・・・。
 怖いもの知らずと言うか、大胆と言うのか、どちらもバイタリティが溢れています。
 空山で大きなテーマになっているのは、ごみ問題。
私の住む地域でも分別収集が行われていますが
果たして、分別された資源ごみが、
ちゃんとリサイクルされているのか?という部分については
私をはじめ多くの市民が知らないままなのではないかと思います。
結局、最終的に全部のごみが同じ場所へ捨てられて悪臭を放っていたとしても
そこまで一般の市民は追求も関心もしないし持たない。
家庭の中で分別して収集場所へ置いたら、あとは野となれ山となれです。
真剣に考えて取り組んでいかなければいけないと思いつつも
どこか他人事のように考えがちな自分を反省しています。(6/26)
これ 空夜  
 帚木 蓬生 (講談社文庫

 読みながら、どこかで同じ内容を見た・・・と思っていたら
2002年の8月に読んでいましたね・・・。
(ってことは、同じ本が2冊あるのかしら? (^ ^;;))
あの時の感想文は、さらっと流してしまっているので、
今回はもう少し突っ込んでみましょうか。
 親の勧めで結婚した真紀の夫 誠 はギャンブル依存症。
ギャンブルというのは、中毒性のあるものなのでしょう。
誠の場合、単に好きというだけでなく、間違いなく病気の範疇に入ります。
友人やサラ金にまで借金をしてでも せずにはいられない。
普通に考えれば、たとえ少額であっても、相手が肉親であっても、
お金を借りるというのは気が重いことだと思います。
その気が重いことを、赤の他人に頼めるという神経からして、
病気でなくて何であろうかと思うわけです。
そんな誠が家庭の中で孤立してしまうのは仕方の無いこと。
もともと誠と恋愛をしたわけでもない真紀の気持ちが
離れてしまうのも、仕方の無いことかもしれません。
 俊子の夫 了平 は従業員20名を抱える小さな会社の社長で
ありがちなことに、社内の女の子に手を出し
挙句の果てに家を出て彼女と一緒に生活をしている。
 そんな夫たちを持つ妻たちは、彼らに飽き飽きしているわけです。
はっきり言って、そんな夫は物理的に要らないわけです。
 世の夫達よ! どうですか? 身につまされませんか?
 それでどうなるのかというと、お決まりのコースです、
妻達に愛人ができるのです。
まあ、何と言うのでしょうか、妻を女として見ていないのは夫だけで
平凡な主婦だって、外に出れば立派な女なんだぞ!ということですよね。
 残念なことに、俊子の愛人 達士は、俊子と付き合い始めて1年程で
事故でトラックに潰されて死んでしまう。
 真紀は夫に愛想をつかして、幼馴染の慎一の胸に飛び込んでしまう。
 この物語は、そこで一旦幕を閉じます。
そして、次の『空山』へ続きます。(6/18)
ここ ルパンの消息 
  横山 秀夫 (カッパノベルズ)
今話題の『横山秀夫氏のデビュー前の作品』いうことで
最初は何気なく読んでました。 ええ、何気なく。
普通に面白いんです。
気負わずにすらすらノンストップで読めるんです。
まあ、密室殺人事件と言っていいでしょうか。
時効寸前なんですよ。 あと数時間なんです。
そこにね、私たち以上の年代には何とも魅力的な
府中の3億円事件なんか絡んできたりしてるわけです。
そんなところもね、面白くて、すらすら読めちゃうんです。
ふ〜ん・・・とか思いながらね。
それがね、ラストに入って、一気に泣かされました。
ツボです。 すっぽりとツボ入り。
やられたなぁ〜。(6/15)
これ 大学のエスノグラフィティ
 船曳 建夫 (
有斐閣)
 東京大学の教授の、いわゆる「お仕事」について
内側から鋭く(?)抉った内容です。
 大学教授って自由人のように見えるけど(そんな人もいるかもしれません)
どんな職業でもそうでしょうが、
内部の人間にしかわからない苦労をたくさん抱えているのですね。
そしてまた、どんな職業でもそうでしょうけど、
真面目に仕事に打ち込もうとすると、子供なんか産み育てていられない。
ここにも、日本の少子化問題の一端があるわけですが、
子供がいなければ成り立たない『大学』で働く職員が
子供を持てない環境にいるというのは、パラドックスですねー。
そんなこと言ってる割りには、船曳センセイってば、4人もお子さんがいるそうですけどw
(6/9)
5月 ここ 霧に消えた約束
 ジュゼッペ・ペデリアーリ(二見文庫)
 
上流階級の若い女性が殺害され、娼婦の格好をさせられていた。
死体には性的暴行を受けた痕跡はない。
 その事件が幕開けになり連続殺人に発展していく一方、
担当の女性警部と町の実業家との恋愛関係も発展していく。
 そんなある日、実業家の妻が娼婦の格好で殺されていた・・・。
 というストーリー展開。
 イタリアンミステリを初めて読みました。いつも、アメリカモノばかりなので。
人の名前に馴染みがないせいか覚えるのが大変。
それと同時に、
「イタリア男性は女性がそこにいたら口説かないと失礼に当たる」
なんて話を聞いたことがありますが、
これほどまでに安易に口説き口説かれるお国柄なのかと、
あきれてしまったり、うらやましくもあったり・・・w
情熱の国なのですねー。
 犯人と思しき人物が死んでしまうので、結局、事件としては解決しないので
多少の欲求不満が残ります。
 やっぱり、勧善懲悪で最後はハッピーエンドがいいなぁ・・・(5/29)
これ 失踪日記
 吾妻 ひでお(イーストプレス)
 何で読んでいたのか、20年以上前、吾妻ひでおの漫画をよく読んでいました。
 漫画そのものをほとんど読まなくなったので、吾妻ひでお氏がこんなことになっていたとは
夢にも思わずにいましたが…。
要するにこれは、鬱状態と言うか、鬱病そのものなのでしょうね。
家族ももちろん心配だったでしょうし、大変だったでしょうが、
一番辛いのは本人だと思います。
・・・こんなふうに思い切って逃避できる勇気があれば、私も楽になるんだろうけど…(5/17)
ここ 化粧(上・下)
 渡辺淳一(講談社)
 
20年位前に発表された小説で、ところどころ時代遅れな言葉が出てくるのが
何となく、くすぐったいような、妙な気持ちになりました。

 細雪を意識して書かれたというだけあって、主人公になっているのは京都の4人の女性。
 双子であった姉が自殺し銀座でクラブを経営する次女。
姉の自殺の原因となった男に復讐し自殺に追い込みますが、
初めて心から愛していけそうだと思った恋人が彼の息子だったことを知り、破局を迎えます。
 お見合い結婚をして実家の料亭を継いだ三女。
頼りない夫の欠点ばかり目に付くようになった頃、
東京からお客としてきた妻子ある男性に恋をし、彼の子供を身ごもります。
夫はそんな彼女と離婚したくないと言いますが、
彼女の方は夫との生活が続くことには耐えられない。
強引に不義の子を出産し、夫とは離婚し、シングルマザーの道を選びます。
 東京の大学に通う四女。
姉達とは違い、自由奔放に羽目を外しながら生きているようで、
やはり、生まれ育ちのよさが根底にある、しっかりした女性です。
 そして、祇園で生まれ育った彼女らの母。
 母親も祖母も、夫を持たずに、強く生きてきた女系家族なのです。

 男の人が描く女性の生理や心理は、微妙に的が外れていて歯がゆい。
「そんなふうに考えないのに」「そんなふうに感じないのに」…と思いながら、
女性の心の中は書いているのに、男性側の心の中は全く書いてないずるさも感じて
イライラが募ってしまいました。
男と女は永遠に解り合えない ということなのでしょうかね・・・?(5/13)
ここ 海辺のカフカ(上・下)
 村上春樹(新潮文庫)
 
15歳の家出少年田村カフカ(仮名)が出会う人々と、
彼の周囲に起こる出来事がなんとも不思議なのです。
 カフカには戸籍上、父親しかいないことになっていて、しかも庶子であるということ。
 カフカの記憶では生みの母親と、血の繋がりが無い姉がいるのだが
11年前に2人ともいなくなり(家出?)、カフカは顔も名前も覚えていないこと。
 戸籍を調べても、二人に関する記述が無いこと。
 唯一残っている写真は、幼い頃のカフカと姉が2人で写っているもので
他には全く写真が無い(父親が処分した?)こと。
 カフカの父親が殺害されたと思われる日に、
猫探しの老人が猫殺しの男を刺殺したらしいこと。
老人は返り血を浴びたはずなのに服には全く血がついていなかったこと。
しかもその日、遠く離れた場所にいるカフカは数時間 気を失っていて
気が付いたときは服に血痕があったこと。
 空間の捩れのようなことが発生しているらしいとは思いますが よくわからない。
 カフカの母親や姉についても、あるいは、父親の正体についても謎のまま。
 真実は読者がそれぞれ想像するしかありません。 (5/3)
4月 これ 親指Pの修業時代(上・下)
  松浦 理英子/河出文庫 
 
こんなお上品サイトでは(?)ストーリーを紹介できないようなキワモノなのですが、
よく読むと、愛について、性について あれこれ考えたくなってしまいます。
 ある日突然、足の親指がペニスになっていた、という女性の話。
 面白くて、一気に読んでしまいました。
 でも・・・やはり、日本人が書く小説は、何となく薄い感じがして読後感が物寂しい。
私は、もっと濃くて、いつまでも浸っていられるような物語の方が好きです。(4/24)
これ コフィン・ダンサー(上・下)
  ジェフリー・ディーヴァー(池田 真紀子 訳)/文春文庫
 
ライム&サックス・シリーズの第2作目。
 5年前、ライムの部下であり恋人だったクレアが
コフィン・ダンサーの仕掛けた爆弾によって死亡した。
そのため、コフィン・ダンサーをなんとしても捕まえたいライム。
 一方サックスは、ライムの気持ちを量りきれず悶々とする・・・。
 文句無しに面白いです。
詳しくは書きませんが、まんまと騙されてしまいます。
真相がわかったときの「やられた!」という気持ちは、小気味が良いです。
そして、シリーズモノに大切な、登場人物の作品を追うごとの変化。
 ライムは、仕事中に首の骨を折って九死に一生を得、
前作では寝たきりだったのが、2作目では車椅子に乗れるまでに回復しています。
しかし、中途障害者(という言葉があるかどうか知りませんが)にありがちな、
とても気難しくわがままな性格になってしまった・・・。
 私はずっと、首の骨を折る=死 だと思っていましたが、
身近な人(O氏)が、かつて首の骨を折ったことがあると知って、
首の骨折=死 ではないのだと知りました。
私は幸か不幸か、O氏と、骨折から回復への期間は全く交流がなく、
骨折する何年も前と、すっかり身体が回復してからしか知りません。
久しぶりに会った時に、何だか人間的に小さくなってしまったという感じを受けたのですが
入院中に人間不信になり、気難しい人になったようです。
ライムと一緒ですね。
 ライムはサックスと出会ってから少しずつ明るく変わっていきます。
 さて、O氏は変われるのでしょうか? 変えてくれる人が現れるのでしょうか?(4/22)
これ フランチェスコの暗号(上・下)
 イアン・コールドウエル、ダスティン・トマスン/新潮社
 
ヒュプネロトマキア・ポリフィーロという15世紀に書かれた本に隠された暗号をめぐる話。
語り手のトムの父親(交通事故で死亡)はヒュプネロトマキアの研究者で、
研究に没頭するあまり家族をないがしろにしていたことで、
トムはヒュプネロトマキアに嫉妬ともいえる感情を抱き、近づくことを避けようとしていた。
ヒュプネロトマキアを研究する学生ポールは、トムの父親を崇拝(?)しており、
トムに近づき、一緒に暗号を解こうと持ちかける・・・。
 というような感じ。
 単に私が興味がないからなのか、暗号解読の部分は全く面白くなくて、
読んでいても頭に入ってこない。
それよりも、ポールの学生時代の恋愛や、
その後の彼の人生における結婚に至ることのできない恋愛の方が興味深いし、
イギリスの大学を思わせるような(『ある愛の詩』を髣髴とさせるような)
彼らの学生生活のほうが、ずっとおもしろい。
 トムの周りでこの本に深く関わる人間は、皆、死んでしまうのだけど、
唯一生き残ったトムはヒュプネロトマキアと恋愛の狭間で苦しんでいる。
 卒業後数年経ったラストエピソードは、それまでの暗さを一転させるような
明るい未来を予見させる。

 ヒュプネロトマキア・ポリフィーロとは実在する本で、英語版で完訳が出ているらしい。
日本人では澁澤龍彦氏が興味を持っていて、自著の中で触れている部分があるという。
(4/16)
3月 これ 無伴奏
 小池真理子/新潮社
 
響子の思い出話という形で語られる
響子の初めてのボーイフレンド渉が、実はバイセクシュアルであった
という、現代であれば「へ〜、そう」で片付いてしまうような話なのだが、
当時のゲイやバイに関する情報量の圧倒的な少なさから
悲劇が起きてしまうという内容。
現代であれば、ゲイもバイもそれほど珍しいわけではないし
当事者になればそれなりに悩むかもしれないけど、
これほどまでに思い出を引きずらないだろうと思う。
この時代ゆえの悲劇 なのかな。
 1960年後半から70年前半くらいの時代の高校生と今の高校生との
世間との関わり方の違い様に戸惑いを覚える反面、
実は、どの時代であっても、高校生のすること、大学生のすることは
大差が無いのだと安心する面もある。
 セピア色の街にタイムスリップできるような、
ちょっと現実逃避したいときに読んでみるといいかもしれない本です。(3/27)
これ 太陽待ち
 辻 仁成/文芸春秋
 
麻薬の売人二郎が頭を撃たれて植物状態になり、
現在と過去が交錯した、知るはずの無い他人の記憶が入り混じった不思議な夢を見ます。
現実の世界では、二郎の弟で、映画の美術スタッフをしている四郎が
二郎がやりかけていた危ない仕事の尻拭いをさせられそうになったり、
二郎の別れた恋人とのロマンスや、撮影中の映画の監督の過去の恋、
二郎の兄貴分の出生にまつわる話などが複雑に絡み合って、
ほどけないまま、物語が終わってしまいます。
実は、ほとんど登場しないけど裏に途方も無く大きな物語を抱えていそうな
一子とみつこという姉妹や、彼らの両親についてももっと詳しく知りたくなってしまう、
そんな不完全燃焼さがまた、ある意味、イイ感じです。(3/22)
これ 硯き小平次
 京極夏彦/中央公論新社
 
存在感が薄い小平次は、幽霊役をやらせたら天下一品の役者。
その代わり、他の役は何もできないし、私生活でも何もできない。
ただ、在るがまま為すがままに生きているだけの人間だけど
実は、そういう生き方ってなかなか難しいものだと思う。
でも、そんなふうに生きることが、生き物の本来の生き方なのだろう。
くだらないことをくよくよ考え込んだり、落ち込んだり、
本当は、そんな必要なんてないはずなのに・・・(3/13)
 

王妃の館〈上・下〉集英社文庫
 浅田次郎
 
倒産寸前の旅行会社がとある高級ホテルの同じ部屋を
2つのツアー客に意図的にダブルブッキング。
しかも、高級すぎたために財政難になっているホテル側も共謀。
片や超高級ツアー(光)、片や激安ツアー(影)。
光ツアー客が外出している間は影ツアー客が豪華な部屋を自由に堪能し、
夜、眠る時には影ツアーはワインセラーを改造した地下室へ・・・。
 という、ドタバタコメディータッチの物語。
 劇中劇のように語られるルイ14世時代の物語は、対照的にお涙頂戴風で
私の好みとしては、劇中劇のほうだけを読みたかった感じです。(3/2)

2月  
恋愛中毒/角川文庫
  山本文緒
いつもちょっとだけ気になっていましたが 何となく手に取れないでいました。
タイトルから、エッセイのようなものを想像していましたが
ところがどっこい、
サイコミステリーというか、サイコロマンスというか、そんな感じ。
転職したばかりの若い男性が付き合っていた女性が
会社に押しかけてくる。
事務員で中年の少し謎めいた水無月という女性が
彼女の相手をして上手く収めてくれ、
彼は成り行きで、水無月の身の上話を聞くことになる・・・。
1人の女性の身の上話かと思いながら読み進んでいくと、
シンデレラストーリーのようなことの始まりから、
だんだん どこかがおかしくなっていきます。
あっと思った時には、もう、大変なことに・・・。
解説にも書いてありますが、本の初めは男性の目線で始まっているのに
終わりは水無月の目線になっています。
どこか、怖いような、うらやましいような、切ないような、
共感できる部分がたくさんあるのに、共感してはいけない、
そんな物語です。(2/17)

彼女は存在しない/幻冬舎文庫
 浦賀和宏
この物語も、解離性同一性障害の女性が出てきます。
主人公はその女性とその兄。
彼らの周囲で起こるいくつかの不可解な死。
果たして犯人は誰なのか?
想像どおりの犯人ではあるのですが、それだけではない。
最後の最後に、大どんでん返しがあります。
一度読み終わって全てがわかった上で、もう一度読み直してみるとおもしろい。
グリコアーモンドキャラメルのように、一粒で2度美味しいです。(2/11)

1月   症例A/角川文庫
 多島斗志之
無意識のうちに、前回と似たような本を手に取ってしまったのでしょうか。
精神科医と臨床心理士の、
DID(解離性同一性障害) 所謂、多重人格患者への挑戦
とも言えるような物語です。
そこに、サイドストーリーとして 
博物館に収められている美術品の真贋をめぐる話も絡んできます。
全て解決をせずに、この物語は終わっています。
書こうと思えば、DID路線でも美術品の真贋路線でも
いくらでも続編ができそうです・・・。
どちらを主にして読んでいても、興味深く面白いと思います。
ところで・・・遊び半分の簡易診断テストのようなもので
精神崩壊寸前と診断された私ですが・・・
この本に出てくる患者の症状に、自分でも思い当たる事があったりして
ちょっと危ないかな、と・・・。
所詮作り事の『物語』なはず。
真に受けて信じる必要なんてどこにも無いのですけど・・・
(1/30)

航路 (上)/ヴィレッジブックス 航路 (下)/ヴィレッジブックス
 コニー・ウィリス
読んでいる途中で気付いたのですが、
作者コニー・ウィリスと私は、年は違うけど誕生日が同じ。
ちなみに、俵万智も年は違うけど誕生日が一緒です。
↑余談でしたね。
本の紹介をしましょう。
臨死体験を解き明かそうとしている認知心理学者ジョアンナと、
臨死体験を科学的に解き明かそうとしている神経内科医のリチャード、
臨死体験を美化して宗教的なものだと考えているノンフィクションライターとの
ある意味、『戦いの本』と言って良いかもしれません。
たくさんの登場人物がみんな個性的で魅力的です。
ストーリーを明かしてしまうとネタバレになってしまうので、
是非、読んでみてください、としか言いません。
臨死体験なんて眉唾モノをテーマにしてるけど、意外と真面目に面白いです。
何にでもすぐに影響されてしまう私は、
この本を読んでいる最中に、愛犬が老衰で死んだ夢を見ました。
以前、スプラッター物を読んだときは、愛犬が悲惨な死に方をした夢を見たので
老衰の方がまだマシでしたが、愛する者の死は、どんな形にせよイやなものですね。
(1/21)

地下墓地/ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM...  
 ピーター・ラヴゼイ
 彼の作品は、どれも好きです。上品な感じが漂い、ハズレがない。
 この物語も期待に違わず。
 古い町バースで、20年程前の人骨が見つかり、
 メアリ・シェリー(フランケンシュタインの作者)の遺品が見つかり、
 ウイリアム・ブレイク(詩人・画家)の未発表の絵が見つかり、
 メアリ・シェリーを研究している大学教授の妻が失踪し、
 骨董品店の女主人が殺され、
 警察官に転職を考えているジャーナリストや、警察就職面接官、
 古い絵画の贋作者、人形芝居、などなど・・・
 複数の事件とそれに関わる怪しげな人物が複雑に絡み合って、
 最後のページを読み終えたときには、満足のため息が出ます。
 (1/6)